先日、令和4年度雇用関係助成金の改正案についてパブリックコメントの募集が開始されました。
その中で、以下の8つの助成金について見直しが検討される予定です。
本コラムでは、各助成金の概要と改正点を分かりやすく解説します。
- (1) 65 歳超雇用推進助成金
- (2) 中途採用等支援助成金
- (3) 両立支援等助成金
- (4) 人材確保等支援助成金
- (5) キャリアアップ助成金
- (6) 人材開発支援助成金
- (7) 通年雇用助成金
- (8) 認定訓練助成事業費補助金
この記事の目次
【令和4年度法改正】「65 歳超雇用推進助成金」
「65 歳超雇用推進助成金」とは、高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現するため、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成するものです。
令和4年4月の法改正により内容が大きく見直されるのは「65 歳超継続雇用促進コース」です。
「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」と「高年齢者無期雇用転換コース」の内容も変更点があります。
【令和4年度法改正】「65 歳超継続雇用促進コース」の変更点
「65 歳超継続雇用促進コース」では、以下(1)~(6)の変更点が予定されています。
- (1) 定年引上げまたは廃止に係る措置の区分「定年の引上げ(70 歳以上)または定年の定めの廃止」枠が細分化される
- (2) 66 歳から 69 歳までの継続雇用制度の導入に係る措置の引上げ幅の2つの区分が統合される
- (3) 60 歳以上被保険者数の区分「10 人未満」枠が細分化される
- (4) 上記の区分変更に伴い全体的に助成額が減額される
- (5) 70 歳以上までの定年引上げ、定年の廃止、70 歳以上の年齢までの継続雇用制度の導入及び 70 歳以上の年齢までの他社継続雇用制度の導入について、取り組み前の年齢が70歳未満であることが追加される
- (6) 措置を講じた日から起算して、6か月前の日から支給申請日の前日までの間に、労 働協約又は就業規則において、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和 46 年 法律第 68 号)第8条または第9条第1項の規定と異なる定めをしていないことを支給 要件として追加される
上記の(6)については詳しく説明します。
「65歳までの安定した雇用を確保する措置を講じていない」等、法律と異なる定めをしている場合は、その状態を是正してから6カ月以上経過してから措置(定年引上げ等)を講じなければならなくなりました。
現在、法律と異なる定めをしている企業は、令和4年4月1日に「65歳超継続雇用促進コース」に申請をしても助成対象になりません。
令和4年4月1日に65歳までの安定した雇用を確保する措置を講じる等を是正した場合、この時点から6か月後の令和4年10月1日以降に措置(定年引上げ等)を講じることになります。
「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」と「高年齢者無期雇用転換コース」についても、計画提出前6か月から法律と異なる定めをしていないことの要件が追加されます。
令和4年度に「65 歳超雇用推進助成金」の申請をお考えの事業主さまは、なるべく早く就業規則等の見直しをご検討ください。
令和4年度の法改正にともなう「65 歳超雇用推進助成金」の変更点については別コラムで詳細を説明する予定です。
【令和4年度法改正】「中途採用等支援助成金」
「中途採用等支援助成金」の「生涯現役起業支援コース」は、生涯現役として働き続けられる社会の実現を目指し、中高年齢者(40歳以上)方の起業を支援するものです。
令和4年度の法改正にともない、「生涯現役起業支援コース」は令和4年3月31日をもって廃止される予定です。
【令和4年度法改正】「両立支援等助成金」
令和4年度の法改正にともない「両立支援等助成金」のコースの内容が変わる予定です。
「両立支援等助成金」廃止されるコース
- 「女性活躍加速化コース助成金」(令和3年度限りで廃止)
「両立支援等助成金」延長されるコース
- 「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース」(助成対象期間を令和5年3月 31 日まで延長)
- 「介護離職防止支援コース助成金(新型コロナウイルス感染症対応特例)」(助成対象期間を令和4年度末まで延長)
「両立支援等助成金」内容が変更されるコース
- 「出生時両立支援コース助成金」
- 「育児休業等支援コース助成金」
- 「不妊治療両立支援コース助成金」
内容が変更されるコースについて、詳しく解説していきます。
【令和4年度法改正】「出生時両立支援コース助成金」
令和4年度の法改正にともない、第1種と第2種が新たに設けられる予定です。
第1種と第2種に定められた条件に該当する中小企業事業主に助成金が支給されます。
助成額は以下のように変わります。
現行 | 令和4年度 |
---|---|
【1人目の育休取得】
57万円(※中小企業事業主では生産性要件を満たさない場合)
| 【第1種】
育児休業取得:20万円
代替要員加算:20万円(3人以上45 万円)
|
【2人目の育休取得】
5日以上:14.25 万円
14 日以上:23.75 万円
1ヶ月以上:33.25 万円
| 【第2種】
育児休業取得率の30%以上上昇
1年以内達成:60万円
2年以内達成:40万円
3年以内達成:20万円
(※生産性要件を満たさない場合)
|
第2種を受給するには、第1種の支給を受けていることが条件になります。
また、第1種、第2種ともに1事業主あたり1回までの支給です。
【令和4年度法改正】「育児休業等支援コース助成金」
令和4年度の法改正にともない次のように変わります。
- (1) 育児休業取得者の代替要員を確保し、当該取得者を原職復帰させた場合の助成について、代替要員の新規雇用等を行った場合の現行の助成のほかに、いくつかの要件を満たした場合についても助成することとする
- (2) 業務代替支援を設ける
【令和4年度法改正】「不妊治療両立支援コース助成金」
令和4年度の法改正にともない次のように変わります。
- (1) 対象事業主の要件に不妊治療と仕事との両立の支援に関する方針を示し、労働者に周知させるための措置を講じている中小企業事業主であることを追加する
- (2) 長期休暇の加算に係る助成金の支給について、1事業主あたり1人までの支給に限る こととする
【令和4年度法改正】「人材確保等支援助成金」
人材確保等支援助成金とは、魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る事業主や事業協同組合等に対して助成する制度です。
魅力ある雇用創出を図ることにより、人材の確保・定着を目的としています。
令和4年度の法改正にともなって以下2点が変更される予定です。
- (1) 建設キャリアアップシステム等普及促進コース助成金の新設
- (2) 建設分野雇用管理制度助成コース助成金の廃止
- (3) 外国人労働者就労環境整備助成コースの見直し
【令和4年度法改正】「キャリアアップ助成金」
「キャリアアップ助成金」とは、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
令和4年度の法改正にともなって下記のコースの内容が変更される予定です。
- (1) 正社員化コース
- (2) 障害者正社員化コース
- (3) 賃金規定等共通化コース
- (4) 諸手当制度等共通化コース
- (5) 短時間労働者労働時間延長コース
【令和4年度法改正】「正社員化コース」
- (1) 有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成を廃止される
- (2) 正社員定義が変更され、現行の「同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者」に加え、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要になる
- (3) 非正規雇用労働者定義が変更され、賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要になる
【令和4年度法改正】「障害者正社員化コース」
- (1) 正社員定義が変更され、現行の「同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者」に加え、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要になる
- (2) 非正規雇用労働者定義が変更され、賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要になる
【令和4年度法改正】「賃金規定等共通化コース」
対象労働者(2人目以降)に係る加算が廃止される。
【令和4年度法改正】「諸手当制度等共通化コース」
- (1) 名称が「賞与・退職金制度導入コース」に変更される
- (2) 諸手当等(賞与、退職金、家族手当、住宅手当、健康診断制度)の制度共通化への助成を廃止し、賞与または退職金の制度新設への助成へと見直しが行われる
- (3) 対象労働者(2人目以降)に係る加算が廃止される
【令和4年度法改正】「短時間労働者労働時間延長コース」
支給要件の緩和および時限措置が延長され、社会保険の適用拡大を更に進めるための措置が取られる。
【令和4年度法改正】「人材開発支援助成金」
「人材開発支援助成金」とは、雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するための制度です。
雇用する労働者に対して職業訓練等を実施したり、教育訓練休暇制度を適用したりした事業主等に対して助成されます。
令和4年度の法改正にともない、「特定訓練コース」、「教育訓練休暇付与コース」、「特別育成訓練コース」の見直しが予定されています。
【令和4年度法改正】「特定訓練コース」
- (1) 対象事業主の要件として、下記が新たに追加される
- ・労働協約、就業規則または事業内職業能力開発計画において、雇用する被保険者に対し、キャリア形成の節目に定期的に実施されるキャリアコンサルティングの機会の確保(セルフ・キャリアドック)にかかる措置を規定していること
- (2) セルフ・キャリアドック制度を導入した事業主に対する助成率を引き上げる取扱いについては、令和3年度限りで廃止する
- (3) グローバル人材育成訓練に対する助成については、令和3年度限りで廃止する
- (4) 特定分野認定実習併用職業訓練に対する助成については、令和3年度限りで廃止する
- (5) 認定実習併用職業訓練における OJT 実施助成額について、1人1時間当たりの助成額から1人1訓練当たりの助成額に改める
【令和4年度法改正】「教育訓練休暇付与コース」
- (1) 教育訓練短時間勤務制度を新設する
- (2) 教育訓練休暇付与コース内の各制度の適用労働者について、有期契約労働者等を追加する
【令和4年度法改正】「特別育成訓練コース」
- (1) 中小企業等担い手育成訓練に対する助成については、令和3年度限りで廃止する
- (2) 有期実習型訓練における OJT 実施助成額について、1人1時間当たりの助成額から1人1訓練当たりの助成額に改める
令和4年度の法改正にともない、建設労働者技能実習コース助成金の賃金助成における割増措置が延長される予定です。
【令和4年度法改正】「通年雇用助成金」
「通年雇用助成金」とは、北海道、東北地方等の積雪または寒冷の度が高い地域の事業主が、冬期間に離職を余儀なくされる季節労働者を通年雇用した場合に助成される制度です。
令和4年度の法改正にともない、暫定措置の延長が行われる予定です。
【令和4年度法改正】「認定訓練助成費補助金」
「認定訓練助成費補助金」とは、令和3年度までの暫定措置として、東日本大震災により被災した認定職業訓練施設の復旧にかかる施設費および設備費についての都道府県への補助率を1/2から2/3に引き上げるとともに、補助対象の経費全体に占める国庫負担割合の上限を1/3から1/2に引き上げる制度です。
令和4年度の法改正にともない、「認定訓練助成事業費補助金」の暫定措置を廃止する予定です。
出典:厚生労働省